20170118/TEDDY

 

「君の言葉は、気持ちが伝わらないよね。」

半年前に辞めた会社の上司に言われた言葉だ。

 

私の言葉は、気持ちが伝わらないらしい。

そういえば学生時代に付き合っていた彼にも、似たようなことを言われた気がする。

 

話すことよりも聞くことの方が得意で、

考えるよりも書き出すことの方が得意な私だ。

きっと前世は、テレビリモコンの受信機かなにかだったに違いない。

 

ツイッターで知り合い程度のお洒落なあの子が呟いていた。

TEDDYというバンドがこれから売れるらしい。

レコードショップに寄った帰り道、試聴機の番号は9番。

 

私もこんな風に真っ直ぐな言葉を歌えたら、

伝わりやすい言葉だけをパズルのように優しく揃えて吐き出すことができたら、

 

なんてそんなこと、考えても仕方ないから、

陳列された前から2番目のそれを手に取り帰路へ。

 

この1枚とともに、今までよりずっと、 

私だけの手のひらサイズの、生き方をしたい。

 

20180118/TEDDY

 

 

「ヒカリノアトリエ」Mr.Children

 

「正」

彼らの音楽、桜井和寿の詩は25年間変わらずに、いつだって正義だ。

 

「性」

それでいて言葉からは、生温い体温を感じさせる。すぐそこに誰かがいる。

 

「聖」

最後には必ず聴く人の心の奥まで、光を届けるのだ。

 

まるで映画を見ているように、誰かと誰かの物語を客観視して聴く歌詞が多い中で、

Mr.Childrenの書く言葉は、誰かと誰かの物語ではない。常に私とあなたの物語だった。

RADWIMPS自身も予想外の2016

 

2016年大ヒットを記録した映画

君の名は。

 

主題歌の「前前前世」を歌うRADWIMPSが一躍話題となった。恥ずかしさがなにかもわかっていないまま、何かと恥ずかしがっていた中学生の頃から聴き続けていたRADWIMPSは、あの当時、メディアに出ないまま同世代の中で瞬く間に拡がり、切なさがなにかもわかっていないまま黄昏るフリをしていた高校生になった頃には、いわゆる超人気バンドの地位だった。

 

と、思っていたにも関わらず、テレビで見ていると、まるで2016年にリリースした1曲が、映画主題歌に抜擢され、いきなり有名になってしまいましたと言わんばかりの顔をされているような気持ちになる。いままでメディアにそれほど出ていなかった彼らなのだから、それはそれで当たり前のことなのかもしれないが、不自然さを感じずにはいられなかった。

 

君の名は。」の中では、「前前前世」どころか、「君の名は。」劇中曲の多くがRADWIMPSによって手がけられ、

RADWIMPSのサウンドトラックとして、アルバムがリリースされた。そこにはまるで、RADWIMPSのニューアルバムリリースのような香ばしさがあった。

 

さらに、当たり前のようにミュージックステーションで曲を披露した。なんでもないやと言わんばかりの柔らかな表情で、野田はタモリと言葉を交わしていた。

録画したHDDから吐き出される有り得ない現実に、僕は有り得ないくらい口を開きながら、何度も見返した。ラッドがMステ出たんだぜ!

なんて、高校生の僕に言っても絶対に信じてもらえないまま馬鹿にされ続けて殺されると思う。

 

ここまであたかも彼らの熱狂的信者のような口ぶりで書き進めてしまったが、実はアルバム「絶対絶命」以降、彼らの音楽から離れていた僕が、ここであえてRADWIMPSの魅力に加え、前前前世はあまり良くないと思うというところまで綴りたくなったのでお付き合い頂きたいと思う。

 

 

《大袈裟》

 

 

RADWIMPSの魅力を端的に言うとこうだ。

 

誰もはしっこで泣かないようにと君は地球を丸く云々、

お前がオカズなら俺はドンブリで50杯は軽くご飯を云々、

俺が木星人で君が火星人でも一生で一度のワープが云々、、、、

 

とにかく面倒くさいほど話のスケールが大きいのだけれど、

me me she」という曲では、

《約束したよね「100歳までよろしくね」
101年目がこんなに早くくるとは思わなかったよ》

と大袈裟な事を言いながらもそれをすぐに現実に写すシーンが描かれていて、

それを受け取った若者達は目の前の恋愛にそのスケールを重ね合わせるのだと感じていた。

また、ここまで大袈裟になる前までに、非常に青臭いような、泥臭いような青春ソングを歌ってみたかと思えば、しっかりとした英語詞を真っ直ぐに突き刺されたりするその武器の広さ、シンプルさが土台にあってこその大袈裟なのだというところに、彼らの魅力が詰まっている。

 

今年大躍進のきっかけとなった映画のストーリーそのものも、「んなばかなぁ〜」と肩の力を抜きながら観ることの出来るような良いものだったため、本来の彼らが持つ世界を存分に広がることができたのだと思う。

 

 

と、数ヶ月前にここまで書いて下書きに保存していたまま、入荷日に入手したRADWIMPSの新譜「人間開花」が、個人的には「ん〜〜?」といったまた変な違和感を生み出したため、続きはこの違和感の正体がわかった時にしようと思う、

 

 

 

「woman's」My Hair is Bad

 

ライブハウスに立ち込める熱気の中に、

ネガティヴこそが最高のポジティブだという筋の通った矛盾を溶かす椎木が織りなす13曲。

 

彼は赤い首輪がついたまま、自らと君とのことを他人事のように、客観的に歌う。

彼は恋人ができても、そのことを常にあの日の君に歌う。

 

彼の口から放たれる音や言葉は、

彼の頭の中から逃げ出してきた感情のあれこれは、

その矛先は、常にあの日の君に向けられている。

 

ここまでして彼に歌を歌わせるその存在は一体なんなのか、一体誰なのか

 

そんなことを考えていると急に抜け出してきて、

若者について、息をつく暇もない言葉を重ねて訴えてくる。強く。

 

最後の曲を聴き終える頃には、

駆け抜けるように去っていく13曲を見送ることしか出来ず、そんな女々しい自分をアルバムのせいにしたくなった。

 

https://youtu.be/yR0KgP7OrSw

 

謎肉祭

 

カップヌードルの謎肉祭が発売されて、余りに売れすぎて3日で休止になったそうだ。販売されることはTwitterかなにかで見ていて、ある日たまたま仕事終わりに寄ったコンビニでみかけて、即買いしたのがちょうど5日くらい前のような気がするので、発売と同時に食べたのだろう、きっと。

 

現在はコロチャーシューになってしまって食べれなくなってしまった謎肉。謎といっても言葉に迷い込むほど難しいものではなくて、ただのミンチ肉なのだ。当時、あの肉を食べることであの赤い、カップヌードルを食べてることを感じた。あの肉が、赤いカップヌードルそのものだった。

 

食べた感想としては、

当時のそれとなにか違う、だった。

 

と、いうのもだ。

昔、実家にミーという飼い猫がいた。

いつの間にか散歩に出て行って帰ってこないままもうかれこれ15、6年は経っていると思う。

 

そのミーは、謎肉が大好きだった。

カップヌードルにお湯を注いで3分間。

(本当は昔からお湯を入れて2分しないくらいで食べ始めてしまう)

 

フタをあけると同時にミーが寄ってくる雰囲気がした。

謎肉を食べているとミーが寄ってくる雰囲気がした。

そこにいた。

 

 

ミーがいなくなってから数年は謎肉が残っていて、

これ、昔うちにいたミーが好きだったよねなんてよく話していたから、

謎肉の歴史については、曖昧が大半でありながらも、よく覚えている。

 

謎肉祭の謎肉を食べても、

ミーが寄ってくる雰囲気はしなかったし、どこにもいなかった。

 

と、そんなナナメな基準で当時と同じものじゃないなんていう主張をしても、

電車の中の咳き込みの方がよっぽど目立つ程度の主張にしかならないし、

きっと当時のものそのものなのだろうから、

やっぱりあの肉は謎肉だ。

「世界観」クリープハイプ

 

つい、先週も同じ時間に帰ってたはずなのに、

随分と日が短くなって、今日はこんなに薄暗い。

残暑。暑さが残ると書くけれど、今日の昼間のそれは残っているどころか、まだまだここにいたはずなのに、いつのまにか山の頭の向こうへ、紫色して溶けてった。

 

 

家に帰るまでの抜け道は、少し登り坂で、なにより薄暗い神社の前を通らなくてはならないから、できるだけ通りたくない。

それでも今日みたいな日は仕方がない。門限を破ることは、お小遣いアップの査定にかなり響くだろう。

こういう点においては、今年小学校を卒業する僕と、今年タバコを卒業する予定のお父さんとなにも変わらないな、と少し大人ぶった僕の足をふと、薄暗い鳥居が止めた。

 

改めて覗き込むと、怖い。

神様が住んでいるから神社なんじゃないのか。

 

 

あれ、そもそも神様ってどんな姿なんだろう。

もしこの時間に鳥居をくぐって神様を見つけた冒険話は、明日のクラスメイトの中で持ちきりになるだろうか。

 

 

クラスでヒーローになる>門限を守る

 

 

この式が頭に浮かぶ頃には鳥居の中へと足が進んでいた。

 

湿気に包まれた木々の奥にぼやっと境内が浮かぶ。

 

1歩、また1歩、

 

境内が手の届くところまで近付いたときには、

覆い茂った木々が、星空の形に丸く開けていて、

まるで大きな望遠鏡で星空を覗き込んでいるような気持ちがした。

きっと、僕はこの瞬間に神様を独り占めしてしまった。

 

 

 

家に着いて案の定お母さんに叱られながらご飯を食べて、

嫌いな野菜を残してお父さんに怒られた。

 

お小遣いアップが遠のいたけど、なんだか今日はそれすらも関係ない気がした。

 

 

今日の景色を明日みんなに話そう。

 

お風呂に浸かって、布団の中で目をつむりこう心に決めて、明日を迎えにいこうとした。

 

遠のく意識の中にいる僕は、

狛犬の左右が入れ替わっていたことや、

雨なんて降っていなかったのに、木々や境内が濡れていたこと、

たくさんの不思議に気付くことはなかった。